2014年09月12日

UG|Step3 苦情発生の共通点(例:旅行とビジネス)

 あなたがお勤めになっているのは大手のホテルチェーンでしょうか。それとも独立系の地域密着型ホテルでしょうか。格式のある老舗旅館やリゾートホテル、ペンションやカプセルホテルで働く方がいるかも知れませんね。規模の大小に関わらず、苦情を発生させる原因には共通点があります。それは「あるべき状態が整えられていない」場合です。大型連休や各週末を中心に、年間100日で売上げを確保する観光地の旅館であっても、平日のビジネス利用やコンベンションの開催期間を中心に売上げを確保する都市型ホテルであっても、小規模ながら常連様に支えられている簡易の宿泊施設であっても、その原則は全く変わりがありません。
 私がホテルマンになった頃は、旅行会社さんの発行するクーポンが全盛でした。時代は移り変わり、今やネット予約を抜きにしてはホテルの経営は成り立ちません。お気に入りのサイトで予算に合った宿を選んで、予め「口コミ情報」などでも施設や食事、サービスの質をチェックしてから利用されています。あなた自身も、違う目的で、異なるタイプの施設を何度かご利用された経験があるのではないでしょうか。この際、施設を利用する側に立ってみるのが一番分かり易いと考え、極端に違う2つの観点を挙げて解説して行きます。暫くはお客様として、何を腹立たしく感じるのか、じっくり思いを巡らせてみて下さい。

1.非日常を満喫する為の旅行の場合。

 ご家族連れであれ、お友達連れであれ、恋人同士であれ、「感動と癒し」を求める旅は加点方式です。小さな幸運を得ただけでも歓びは膨らんで行き、多少のハプニングなら旅の良い思い出になると笑い飛ばしてしまいます。宿についても概ね寛容で、予約した内容との大きな齟齬でもない限り、自ら旅行気分を害してしまう様な言動は好まれません。しかし、それは秘めたる期待の裏返しの感情でもあるのです。
 お客様の視点は「ふれあい」「おもてなし」「まごころ」など、いわゆる一期一会に重きが置かれていて、最低限の予備知識も得て来ているお陰で、絢爛豪華な開業後間もないホテルでなくても、直ぐさま意気消沈してしまう様な事はまずありません。それどころか、接客するスタッフの力量次第では「建物の古さ」や「料理の貧弱さ」さえ、ある程度ならカバーする事が出来るのです。しかしながら、この「加点」がどこにも感じ取れないとなると、お客様の目は忽ち厳しいものへと変わってしまいます。突如として減点方式に切り換え、その後は見る物聞く物の全てを訝しんで行くのです。一例を挙げるならインフォメーションです。優れたホテルのフロントデスクは、どこも等しく整然としていてシンプルです。ホコリを被った観光スポットのパンフレットや、お客様を牽制する内容の告知で埋め尽くされている事は絶対にありません。あくまでもその都度の「会話」を重視しているからなのです。会話を交わさずに済ませ様とするホテルの姿勢に「ふれあい」や「おもてなし」、ましてや「まごころ」を感じる事はありません。当然ですが、お客様が加点を与える事もないのです。非日常を満喫する旅行での「あるべき状態が整えられていない」とは、正にこの事を指すのではないでしょうか。

2.ビジネスシーンで利用する場合。

 これほど高度に情報化が整備された社会の中で、今や多くのビジネスマンが24時間体制を強いられています。解放感にひたって寛ぐべき客室内でも、正確無比なデジタル機器の画面と深夜まで向かい合っているのです。お客様が求めているのは、迅速で過誤のない「約束が守られる」サービスです。無論の事、ホテルへの評価は減点方式となるでしょう。
 モバイル製品の発達と普及によって、電話の取次ぎやメッセージの受け渡しは激減しました。使い捨てのカードキーであれば、外出からお戻りの際に会話を交わす機会もありません。ご予約ですら一方的にPCへ送られて来る時代なのです。人間的な関わりが希薄となってしまいました。これも裏を返して考えてみれば、お客様の側から見るホテルマンは、もはや宿泊する場所に付帯する設備の一部でしかないのかも知れません。
 お客様の生命と財産をお守りする崇高な使命を負っているからこそ、ホテルマンはこの時代の変化にも鈍感であってはならないのです。一例を挙げてみましょう。頻繁に苦情の発生するホテルのフロントクラークは、驚くほど客室の維持管理に対して無関心です。日々のインスペクションはおろか、苦情処理以外は客室階に自ら足を運ぶ事はないのです。大切な商品である客室をどう捉えているのでしょうか。誰も清掃後の点検を行わないと知っている委託業者が、最低限のメイドの数で最大限の部屋数をメイクさせているのも頷けます。重要なデータの入力されているPCがデスクの上に置かれていても、時間に追われる彼女たちが気に掛ける事はありません。平然とドアを開け放ったままで、忙しなく上下の客室階を往来しているのです。何も起きない方がむしろ不自然にさえ思えて来ます。崇高な使命を負っている筈のホテルマンが、あるべき自らの状態を知らずに、施設の一部にすら見えてしまうのはそのせいなのでしょうか。



ラベル:基礎知識
posted by 幻のホテルマン at 14:11| Comment(0) | TrackBack(0) | スタッフ編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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