2014年09月12日

UG|-はじめに-

 毎日の不規則な勤務、ご苦労様です。あなたは今、このブログを職場のホテルでご覧になっていますか。もしかしたら、大変に緊迫した事態の中で画面を見詰めているのかもしれませんね。人員が手薄となる深夜のビジネスホテルであればなおさらです。もし仮にそうであるとしたなら、とことんまで追い込まれてしまった状況下で、あなた自身が何を頼りにどう判断して対処すべきなのか。これから一緒に考えて行きたいと思います。勿論、最後の決断を下すのは当事者であるあなたや上司の皆さんです。このブログはあくまで補完の為の道具でしかありません。それでも、出来る限り多くの要点を材料として踏まえておく事が、最善の判断にたどり着く為の必須条件なのだと理解しておいて下さい。
ラベル:基礎知識
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UG|Step1 UG(Undesirable Guest)とは何か?

 ホテルの円滑な運営や、日常業務の遂行を著しく阻害する個人又は団体、及び施設内で意図的に犯罪行為を行う者の総称。この辺りが一般的な定義でしょうか。なかでも頻繁に起こり得るのが、激昂したお客様によるホテルマンへの威圧的な言動です。ケアレスミスや接客態度に過剰な苦情を申し立て、凡そ現場担当者の権限では受け入れ難い無理難題を押し付けて来る。当然の事であるかの様に責任者との面談を強要し、度を越えた謝罪の要求や、金品による補償までもを暗に臭わせては更にハードルを上げて来る、そんな事例が象徴的です。ロビーやレストラン、あるいは夜間の客室階で大声を張り上げたり、応対にあたったホテルマンを有無を言わさず長時間に渡って拘束する。誰もが解放される事のない異常な緊張の中で疲労困憊させられ、毅然たる対応どころか、この悪夢から逃れられるのなら多少の譲歩は止むを得ないとまで思い込まされてしまいます。謹厳実直なホテルマンにとっては、正に天敵と言っても過言ではありません。はなからまともに太刀打ちの出来る相手ではないのです。

でも、ちょっと待って下さい。

 本当にそうなのでしょうか。今、あなたを窮地に追い詰めているお客様が、明らかにUGであると決め付けて良い根拠は十分に得ているのでしょうか。このベースとなる判断に誤りがあれば、問題解決はおろか、あなたとホテルは泥沼の深みへとはまって身動きが取れなくなるかも知れません。
ラベル:基礎知識
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UG|Step2 本当にUGなのか?

 最も重要な判断の一つであると考えます。私の長い経験上、威圧的に、あるいは執拗に苦情を申し立てて来るお客様の大半が、ホテル側の落ち度による「逸失利益の回復」を求めているに過ぎません。フロントであれば予約の間違いや客室清掃の不備、飲食施設であればオーダーミスや異物の混入など、実にシンプルで明快な理由によるものばかりです。素早い対応でお客様の不満や不信が解消されていたならば、どれも決して大事に至る事はありません。悪質なUGと混同するなど以ての他なのです。
 それでは何故、こんなに初歩的で平易な判断を、あなたやあなたの上司が間違えてしまうのでしょうか。その辺りを丁寧に検証して行きましょう。

1.誰のミスによる苦情なのか。

 少し遠回りですが、フロントのナイトクラークを例に挙げてひも解いてみます。24時間が交替で運営されるホテルの夜勤者には、ステイしているお客様への連続性がありません。前日の夜勤者からの引継ぎは、多くは日勤者を介して聞く事になるのです。自然な流れとして、日勤者は自らの応対した昼間のお客様に関する情報伝達が分厚くなり、ややもするとそれ以外の内容が型通りになってしまいがちです。ましてや、前夜にお客様から強く念押しされた手配であっても、その場の臨場感に欠ける者同士の引継ぎでは、真意や主旨が曲解されてしまう恐れが十分にあるのです。ステイされているお客様がお戻りになられた際、前夜に依頼しておいた内容の遂行が不十分であったり、もしかしたら完全に忘れ去られていたなら、苦情が発生するのはむしろ当たり前と言えます。しかし、突然に声を荒げられ、罵声を浴びせられる当日の夜勤者はたまりません。夜間であれば館内の人員も十分ではなく、速やかに逸失利益の回復を図る事も困難だからです。皆さんもご経験があるでしょう。お客様が激怒されている内容さえも直ぐには掴めないまま、慎重にキーワードを探りながらただひたすら謝り続けるしかないのです。恐らくは前日の夜勤者や日勤者の引継ぎミスへの憤りが込み上げて来て、後の犯人捜しにそのストレスのはけ口を求めるのではないでしょうか。
 とは言え、これに類似したケースは比較的早い段階で問題解決に至る事が多いのも確かです。なぜならば、自分以外に責めを負うべき人間が存在しているからです。つまりは大至急堂々と上司にコンタクトを取って、客観的な状況や把握した経緯を包み隠さずに報告し、その的確な指示や判断を仰いで、手際の良い対処が適切に行われていると言う理由によるものです。

2.上司への報告に虚偽や隠ぺいはないか。

 もうお分かりだと思いますが、自分自身が関わっている場合が一番厄介なのです。出来る事なら上司への報告はしたくない。他のスタッフまで巻き込んで大ごとにもしたくない。そんな心理があるからでしょうか。自分一人で苦情を抱え込んでしまい、問題解決の為の初動の対応が大幅に遅れてしまう事があるのです。さらに言えばバイアス(偏向)のかかった報告です。決して意図的に話を捻じ曲げているつもりはなくても、事態の本質を見抜けない恣意的な発言で上司の判断を誤らせてしまう事も少なくはありません。又、どんなに潔い性格の持ち主であっても、殊更に自らの無能さを強調したくはないでしょう。無意識のうちに何らかの必然性を模索して、お客様の側にも問題があったかの様な説明を加えて行ってしまうのです。しかしながら、当該担当者が自らのミスを隠そうとする場合は、それとは比べものにならないほどに深刻です。上司への報告に至るまでの肝心かなめな都合の悪い部分を除外してしまい、まさかに苦情自体が不当なものであるかの様に話を装ってしまうからです。

3.お客様の真意を正確に理解しているか。

 検証の順序が逆であるかの様に思われますが、1から2の項目を自己診断した上での検証となります。鬼の様な形相で睨み付けられ、それが自分のミスによる苦情であると判った時、お客様の言葉を冷静に受け止めるのはとても難しいかも知れません。瞬間的には頭の中が真っ白になってしまうのではないでしょうか。はたまた、自己弁護や言い訳にのみ終始して、気が動転した状態で逆に火に油を注いでしまうかも知れないのです。いずれにしても、どんな逸失利益が生じたのかを正しく理解出来なければ、到底その迅速な回復は望めません。これは理解力やコミュニケーション能力の不足によるものではなくて、如何に雑念を払い除け、目の前のお客様の言葉に集中出来るかにかかっています。お客様の側も自分の訴えを軽視する態度がホテルマンに見えれば、その怒りは助長され、普段は慎ましかやな紳士や淑女でさえも、思わず語気を強めて一歩も引けなくなってしまうに違いありません。

4.チームとして連携しているか。

 烈火の如くに声を荒げているお客様であっても、ホテルマンが自分の言葉に真摯に耳を傾けて、平身低頭にお詫びの言葉を述べているのであれば、やがては理性が働いて態度を軟化させて来る場合が多くあります。しかし、せっかく苦情の内容が明らかとなったのに、他のスタッフが事の次第を傍観していたのでは、お客様の貴重な時間を浪費させて新たな苦情に繋がる怖れも多分にあります。直接応対していないスタッフこそが、全力を傾けて逸失利益の速やかな回復にあたるべきなのです。
 勿論、休憩などで一時的に持ち場を離れていたスタッフとの、子細な情報の共有も欠かせません。一旦は客室へと引き上げたお客様であっても、不快な感情が再燃してフロントに戻って来られる事があり得るからです。いきなりの内線電話でその後の経過を確かめ様とするかも知れません。今度も必ずあなたが応対出来るとは限らないでしょう。もしも事情を呑み込んでいないスタッフが応対して、苦情のあった事さえ聞いていないとお客様が知れば、ホテルには自分の逸失利益を回復させる意思がないのだと受け取って、事態を悪化させるのは火を見るよりも明らかです。

5.対処の過程を伝えているか。

 待たされる側が時間を長く感じるのは、皆さんの日常生活でも変わりはないと思います。苦情を申し立てて昂ぶっているお客様ならなおさらです。実際にどんな対処がなされているのか。内心では様々な不安を抱きながら、満足のいく素早い回答を待っておられる筈なのです。もしもホテルの出す結論がお客様の要求に遠く及ばない内容となった場合、あなたはそれをどの様にお伝えすべきなのでしょうか。
 本当に精一杯の努力の果ての結論であるなら、必ずその過程についても具体的に正確に補足をしておかなければなりません。あなた自身が委縮してしまい、言葉の少ない事務的な伝達になってはならないのです。ホテルマンにとって「言葉」は、何よりも大切なスキルの筈です。お客様の側からホテルの誠意とその努力の跡が見えなければ、さんざん待たされた挙句の期待外れの回答に納得される可能性は大変低いと言わざるを得ません。何をどの様に時間をかけて善処したのか、あるいは手段や見方を変えて再考したのか、ホテルのスタッフが総動員で取り組んだ事実を、リアルに、そして丁寧にお伝えする必要があるのです。
 逸失利益の回復に相応の時間を要する場合も同じです。いら立った状態で待たされているお客様を、何らの情報もお伝えしないまま長時間放置してはいけません。お待たせしている事へのお詫びも含めて、時間の経過に合わせた進行状況の説明をすべきであると心得ていて下さい。

 如何でしたか。全ての項目をクリアなされていましたか。これらの基本が押えられていなければ、大切なお客様をUGと決め付けるのは論外です。次のステップでは、もう少し踏み込んだ事案でご説明して行きましょう。

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